株式会社コメ兵ホールディングスにとって、サステナビリティとは事業そのものです。そのため「事業マテリアリティ」を核として、社会や環境も踏まえた「ESGマテリアリティ」を設定し、気候変動対応は重大な経営課題の一つとして認識しております。リユースによる資源の循環促進をはじめ気候変動リスクへの対応等、グループでサステナビリティの実現に向けた取り組みを推進しております。
サステナビリティ SUSTAINABILITY
株式会社コメ兵ホールディングスにとって、サステナビリティとは事業そのものです。そのため「事業マテリアリティ」を核として、社会や環境も踏まえた「ESGマテリアリティ」を設定し、気候変動対応は重大な経営課題の一つとして認識しております。リユースによる資源の循環促進をはじめ気候変動リスクへの対応等、グループでサステナビリティの実現に向けた取り組みを推進しております。
TCFD提言は、気候変動による財務への影響の開示を目的とした枠組みであり、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に沿って開示することを推奨しています。当社グループは、TCFD提言が求める4つの情報開示項目に基づき積極的な情報開示をするとともに、気候変動対応の具体的な対策を講じ、取り組んでまいります。
当社グループは、ビジネスの推進自体がサステナビリティに貢献している企業であることから、サステナビリティ経営を事業推進とともにグループ全社で横断的に推進するため、2023年4月に代表取締役社長 を委員長とするサステナビリティ委員会を設置いたしました。
取締役会は、EXCOMおよびサステナビリティ委員会で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループの環境課題への対応方針および実行計画等についての協議・監督を行っています。2024年5月には、2028年までの中期経営計画「Beyond the 80th year milestone」において、GHG排出量の削減目標をグループ全体で取り組む重点項目として決議しました。
代表取締役社長は、サステナビリティ委員会の委員長も担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。EXCOMおよびサステナビリティ委員会で協議・決議された内容は、最終的に取締役会へ報告を行っています。
環境課題に関する具体的な取り組みは、年4回開催されるサステナビリティ委員会と業務執行の最高意思決定機関であるEXCOMが連携し、協議・決議しています。また、サステナビリティ委員会では、当社グループの環境課題に対する実行計画の策定と進捗モニタリングを行っています。
当社グループでは、「リスク管理規程」に基づき、リスクマネジメント委員会を中核とするリスク管理体制を構築しています。リスクマネジメント委員会では、毎年実施する環境分析をもとに、リスクが顕在化する可能性の程度・時期や事業への影響の観点で、気候変動関連を含む包括的なリスク・機会を特定し、評価し、対応策を審議しています。リスクマネジメント委員会での協議内容は、EXCOMに報告されるとともに、サステナビリティ委員会に共有されます。
なお、上記一連のプロセスにおけるリスクマネジメント委員会、サステナビリティ委員会での協議内容、EXCOMの決議事項については、それぞれ適時取締役会に報告しており、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応しています。
当社では、気候変動による平均気温の上昇と、それに伴う社会情勢の変化や災害リスクを重要視し、対策を進めることとしています。
その一環として、気候変動がもたらす短期・中期・長期それぞれの「リスク」と「機会」を特定し、シナリオ分析を実施しています。
シナリオとしては、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つを参照しました。
これは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル, Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次評価報告書やCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)でみられるように、産業革命期からの地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑える取り組みが国際的に求められている点を考慮しています。
今回、政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートを参考に、気候変動がもたらす移行リスク(政策・法規制、市場、評判)、物理的リスク(急性、慢性)、ならびに気候変動への適切な対応による機会(製品及びサービス、市場、レジリエンス)について、網羅的な検討を行いました。
種類 |
設定シナリオ |
参照シナリオ |
概要 |
移行リスク・機会 | 1.5℃シナリオ | l 国際エネルギー機関(IEA), 「World Energy Outlook 2022」Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE2050シナリオ) l リユース経済新聞 リユース業界の市場規模推計2024(2023年版) |
21世紀までの平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ。 持続可能な発展を実現するため、大胆な政策や技術革新が起こり、その分脱炭素社会への移行にともなう社会変化が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。 |
物理的リスク | 4℃シナリオ | l 気候変動に関する政府間パネル(IPCC), 「IPCC第6次評価報告書(AR6)SSP5-8.5シナリオ」 l 環境省・文部科学省・農林水産省・国土交通省・気象庁「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響」 l 国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会 気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言(令和3年4月改訂)」 |
21世紀までの平均気温が4℃程度上昇する。 成り行き任せに近く、社会の変化は起こらないが、気候変動に伴う異常気象や災害が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。 |
項目 |
シナリオ分析対象範囲 |
地域 | 国内および海外の全拠点 |
対象事業範囲 | 直接操業、上流・下流のサプライチェーン全体 |
企業範囲 | 連結全体 |
時間軸の定義および自社の計画期間との整合 | 短期(現在~2028年):中期経営計画「Beyond the 80th year milestone」 中期(2030年):2030年コメ兵ホールディングス全体におけるGHG削減目標年 長期(2050年から先):我が国および国際的なカーボンニュートラル達成目標年 |
試算方法 | ・移行リスクについては2030年時点での単年の財務インパクトの結果を試算、開示している。 ・物理的リスクについては、使用した気候変動シナリオが定義する時間軸における単年の財務インパクトの結果を試算、開示している。 |
区分 |
リスク項目 |
時間軸 |
事業領域 |
影響 |
重大度 |
対応策 |
政策・法規制 | GHG排出に関する規制の強化 | 中期~長期 | 共通 | 炭素税の導入に伴い、自社で使用するエネルギー使用に関わる炭素排出量への課税コストが増加 | 大 | ・再生可能エネルギーの導入計画の策定 ・ビルオーナーへ再生エネルギー切り替えへの働きかけ ・店舗の省エネ化 |
市場 | 原材料コストの上昇 | 短期~長期 | 共通 | 再生可能エネルギーへの転換に伴い、電力調達コストが増加 | 中 | ・店舗の省エネ化 ・LED設備への転換(使用量の抑制) |
評判 | ステークホルダーからの懸念の増加 | 短期~長期 | 共通 | 気候変動課題への対応の遅れに伴い、ステークホルダーからの信用およびレピュテーションが低下し、企業価値が毀損 | 中 | ・リユース商品の総流通量の拡大 ・事業拡大がもたらす気候変動への影響度の定量化・開示 ・サステナビリティ戦略の明確化と推進 ・サステナビリティ認証の取得 ・TCFDをはじめとしたサステナビリティ関連開示の強化 ・温室効果ガス削減をはじめとする目標設定・開示 ・サステナブルファイナンスの活用 ・ブランド企業や顧客とのエンゲージメント強化 ・投資家との積極的な対話 |
消費者選好の変化 | 中期~長期 | ブランド・ファッション | 地球環境への影響と動植物の保護の観点から、天然資源を使用するブランド品の流通量が減少し、売上が減少 | 中 | ・環境負荷低減ができるリユース商品の価値を積極的に発信 ・商品を長く使用できるサービス(リペア、リフォーム、メンテナンス等)の提供 |
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急性物理的 | 異常気象の深刻化 | 短期~長期 | 共通 | 大雨や台風によって、一部の店舗や物流拠点の営業が停止し、売上機会が減少 | 大 | ・洪水リスクの予測と防災対策の強化 ・サプライチェーンの分散化 ・BCPの整備 ・保険の活用 ・在庫を長く保有しない市場成長関与ビジネスの拡大 |
慢性物理的 | 平均気温上昇 | 短期~長期 | 共通 | 異常気象(大雨、猛暑)による来店者数の減少に伴う、売上機会の減少 | 大 | ・販売先チャネルの再検討(オンライン販売の強化、法人向け販売の強化) ・気候に応じた商品ラインナップの拡充 ・出店戦略、ロケーション戦略の見直し ・プロモーション、キャンペーンの実施 |
短期~長期 | ブランド・ファッション | 暖冬による冬物をはじめとした取り扱い商材の縮小とそれによる売上機会の減少 | 大 | ・在庫管理の最適化 ・季節要素に左右されない新たなビジネスモデルの構築 ・気温上昇によるニーズに合わせた商品・サービスの展開 |
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短期~長期 | タイヤ・ホイール | 暖冬による、冬用タイヤ等の季節商材の売上減少 | 大 | ・在庫管理の最適化 ・季節要素に左右されない新たなビジネスモデルの構築 ・気温上昇によるニーズに合わせた商品・サービスの展開 |
※重大度の定義については、弊社の売上に対して与える影響が相対的に大きい項目を大としています。
炭素税の導入(事業共通) | 財務インパクト価格 | 約34百万円 |
計算方法の説明 | 2022年度Scope1,2排出量:3,003tCO2 2022年度比42%削減するとした場合の2030年度Scope1,2想定排出量に対して、炭素税$140/tCO2がかかると仮定して為替レート140円/$で算出した。 ※出典:IEA NZE シナリオ |
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炭素税の導入(タイヤ・ホイール事業) | 財務インパクト価格 | 約207百万円 |
計算方法の説明 | 2030年に、現在の調達しているタイヤ製造におけるGHG排出に対して、2030年度に炭素税$140/tCO2がかかると仮定して為替レート140円/$で算出した。 ※出典:IEA NZE シナリオ |
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再生可能エネルギーへの転換 電力調達コストの増大 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 約2百万円 |
計算方法の説明 | 2030年度にScope2排出量を22年度比で42%削減するとした場合、その年における追加電力料金の予想額 | |
気候変動課題への対応遅れ 信頼の失墜、企業価値の毀損 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 約27~約72百万円 |
計算方法の説明 | 2024年3月期の最低株価:2,369円/最高株価:6,390円 発行株式:1,125,700株 2024年3月期の株価に対して、1%下落の影響があると仮定して算出した。 |
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天然資源を使用するブランド品の流通量減少 (ブランド・ファッション事業) |
財務インパクト価格 | 約5,704百万円 |
計算方法の説明 | 2024年3月期のブランド事業売上:114,083百万円 2024年3月期のブランド事業売上に対して、5%減の影響があると仮定して算出した。 |
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大雨や台風による営業停止 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 約2,752百万円 |
計算方法の説明 | 拠点ごとの1日あたりの売上金額、買取金額に、拠点ごとに想定される浸水深に応じて営業停止日数を乗じて算出した。 ※営業停止日数は、『TCFD提言における物理的リスク評価の手引きver.1.0』の3.6.2営業停止被害の評価方法を参照 ※拠点ごとの浸水深は、国土交通省の浸水ナビにてシミュレーションを実施 |
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異常気象による来店者数減少 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 約315百万円 |
計算方法の説明 | ブランド・ファッション事業、タイヤ・ホイール事業の1日あたりの売上金額:158百万円 ブランド・ファッション事業、タイヤ・ホイール事業の1日あたりの売上金額に対して、1日あたりの売上低下率5%、真夏日の増加日数40日と仮定して算出した。 |
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暖冬による取扱い商材の縮小 (ブランド・ファッション事業) |
財務インパクト価格 | 約238百万円 |
計算方法の説明 | 冬物商品の売上金額:4,771百万円 冬物商品の売上金額に対して、暖冬による売上低下率5%と仮定して算出した。 |
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暖冬による冬物商材の売上減少 (タイヤ・ホイール事業) |
財務インパクト価格 | 約318百万円 |
計算方法の説明 | 冬物商品の売上金額:2,472百万円 積雪が10%減るにつき、冬物商品の売上5%減の影響が出ると仮定。 保守的に4℃上昇シナリオから、積雪が70%減少すると仮定して、冬物商品の売上金額に積雪減少による売上低下率を乗じて算出した。 ※日本の気候変動2020-大気と陸・海洋に関する観測・予測報告書-を参照 |
区分 |
機会項目 |
時間軸 |
事業領域 |
影響 |
重大度 |
対応策 |
エネルギー源 | 低炭素エネルギー源の利用 | 短期~長期 | 共通 | 省エネ化を進めることによる、エネルギー使用量およびエネルギーコストの減少 | 中 | ・LED切り替え |
製品およびサービス | 消費者選好の変化 | 短期~長期 | ブランド・ファッション | リメイク商品の開発および販売拡大による売上増加 | 大 | ・リメイクジュエリーブランド「mi luna」、「ALLNIQUE」の認知拡大 ・ジュエリー以外のリメイク商品への挑戦 |
中期~長期 | 共通 | サーキュラーエコノミー気運の高まりに伴う、リユース利用者の増加 | 大 | ・一次流通をはじめ、他業種との連携 ・自社ノウハウのライセンス提供 ・テクノロジーを活用した利便性・安全性の向上 |
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サービスの開発・拡大 | 中期~長期 | ブランド・ファッション | ブランド品原材料が希少になることによる、二次流通の拡大 | 大 | ・リユース商品の総流通量の拡大 | |
短期~長期 | ブランド・ファッション | 二次流通の新規参入事業者に対する、自社ノウハウ、データベースの活用機会の増加 | 大 | ・グループ間のデータ連携強化 | ||
市場 | 公的セクターによるインセンティブ | 中期~長期 | 共通 | 環境への積極的な取り組み、適切な情報開示による企業価値向上や資金調達先の拡大 | 大 | ・事業を通じた社会貢献活動の推進とステークホルダーへの積極的開示 |
省エネ化の推進 エネルギーコストの減少 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 非公開 |
計算方法の説明 | 自社の事業計画に沿って見積もり。 | |
リメイク商品の開発 (ブランド・ファッション事業) |
財務インパクト価格 | 非公開 |
計算方法の説明 | 自社の事業計画に沿って見積もり。 | |
サーキュラーエコノミーの機運の高まり リユース利用者の増加 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 33,449百万円 |
計算方法の説明 | 2024年度3月期売上金額:119,459百万円 2024年度3月期の売上金額にリユース市場の成長率を乗じて試算。 ※リユース市場の成長率は、リユース経済新聞『リユース業界の市場規模推計2024(2023年版)』より算出 |
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ブランド品原料の希少化 二次流通の拡大 (ブランド・ファッション事業) |
財務インパクト価格 | 非公開 |
計算方法の説明 | 自社の事業計画に沿って見積もり。 | |
自社ノウハウ、データベース活用機会の増加 (ブランド・ファッション事業) |
財務インパクト価格 | 非公開 |
計算方法の説明 | 自社の事業計画に沿って見積もり。 | |
企業価値向上 資金調達先の拡大 (事業共通) |
財務インパクト価格 | 非公開 |
計算方法の説明 | 自社の事業計画に沿って見積もり。 |
当社では、持続可能な社会の実現に向けて、温室効果ガス排出量を含む環境関連の指標を設定し、管理しています。
目標については、「世界全体の平均気温上昇を1.5℃未満に抑制する」というパリ協定での国際的な削減目標を踏まえ、環境面における定量目標を設定しました。この目標と実績の推移は、以下の通りです。
指標 |
目標 |
GHG排出量(Scope1,2) |
42%削減(2022年度比) |
分類 |
定義 |
実績 (2021年度) |
実績 (2022年度) |
実績 (2023年度) |
実績 (2024年度) |
Scope1 | 事業者による直接排出(ガソリン、LPガスなどの燃料の燃焼、もしくはフロン漏洩) | 335 | 292 | 413 | 421 |
Scope2 (マーケット基準) |
他社から供給されたエネルギーの間接排出(電気・熱の使用) | 2,407 | 2,711 | 3,352 | 2,707 |
Scope1,2合計 | - | 2,742 | 3,003 | 3,765 | 3,128 |
※算定期間:決算期間と同期間(4月~3月)
※算定方法:GHG Protocol Corporate Standard(2004)およびCorporate Value Chain (Scope3) Accounting and Reporting Standard (2011)に基づき、財務支配力基準を採用して算定した。
※算定対象:コメ兵ホールディングス連結全体
※Scope1,2合計はマーケット基準にて計算しています。
※なお、Scope3については、今後順次把握に取り組み、ステークホルダーの協力のもと削減を進めていく所存です。
2024年度(2024年4月~2025年3月)にリユースを通じて7.2万t-CO2eqの温室効果ガスの排出量を回避しました。
・削減貢献量の考え方
環境負荷を低減する手段として、中古品を新品の代替として積極的に活用することが有効であると考えられます。 この度、簡易算定アプローチを用いて「①新品を購入した場合」と「②中古品を購入した場合」の 2つのシナリオのGHG排出量を比較し、その差分である原材料調達・生産を削減貢献量として算定しました。
・削減貢献量の算定方法
取り扱う主要製品6アイテムにおいて以下14品目に分類し、 各代表製品のデータを用いて1品目当たりの削減貢献量をLCIデータベース「IDEA v3.4.1」を使用し算定しました。
「原材料調達~生産~流通~使用~廃棄」における環境負荷を比較の上、原材料調達及び生産に伴う排出量を削減貢献量として評価しています。
※お客さまが中古品を購入後、加工が想定される製品「金地金」「ダイヤルース」 は原材料調達に伴う排出量のみ対象としています。 代表商品の選定に際しては売上構成比が高く、平均単価に近しい、流通量が多いものを選定しました。 各品目において代表商品の重量と素材構成率を把握し、1点当たりの削減貢献量を把握し販売点数を乗ずることで、該当年の削減貢献量を算定しています。
中古品の取引件数がすべて新品の製造抑制に直結するとは限らないため、 代替率を考慮することが望ましいと考えられますが、本年度の算定においては考慮をしていません。
2024年度( 2024年4月~2025年3月)において、削減貢献量の算定対象とした販売点数は合計2,988,042点でした。